kojiasanoのブログ

株式会社リンクアンドモチベーションで執行役員として組織人事コンサルティング事業、投資事業を担当している麻野耕司のブログです。

2016年の抱負

2016年は4つのサービスカテゴリに取り組んでいきます。

投資をしながら、自分では投資家の方々が決して投資をしない受託型のビジネスを展開してきました。従来のビジネスにおいて四半期決算できっちりと結果を出しながら、ビジネスモデルを進化させていくのはなかなかタフですが、やるしかありません。

目指す事業の姿ははっきりと見えたので、後はとにかくしっかりと目に見える結果を残すだけだな、と思っています。

モチベーションエンジニアリングによって、世界中の人がモチベーション高く働くことができる日が来ることを信じて、挑戦していきます。

⚫︎インデックス事業

私は成功する活動には「ものさし」があると考えています。勉強には「テスト」が、ダイエットには「体重計」があることで初めてPDCAがまわります。経営においては、事業においてはP/Lをはじめとした様々な「ものさし」がありますが、組織にはほとんどありません。これを組織インデックスを「ものさし」として提供する事業です。既に5000社25万人分のデータが蓄積されていますが、今後はクラウドやAI(人工知能)を活用して発展させていきたいと思います。昨年の下半期はこの事業のプロダクトとマーケティングの仕込みに動いていましたが、今年は一気に勝負をかける年になります。

この事業で世界の「経営指標」を変えたいと思います。

⚫︎プロジェクトラーニング事業

私はこれから企業内の人材教育のあり方は大きく変わっていくと思います。インターネットによりありとあらゆる情報が得られるようになる中で知識提供を目的としたいわゆる「教育研修」はなくなっていく可能性すらあると考えています。実際に、日本の教育研修は約5000億の市場がありますが、誤解を恐れずに言うと、その大半が効果の薄いものへの投資になってしまっています。昨年は、意識変革や知識提供の後の行動変革のメソッドを行動科学の知見なども活用しながら磨き込みました。自分たちのサービスを研修と呼ぶこともやめました。やがてはBtoC領域にも転用できるレベルの技術開発をしていこうと考えています。

この事業で世界の「人材教育」を変えたいと思っています。

⚫︎コンサルティング事業、インキュベーション事業(投資事業

「戦略人事」というワードが語られるようになりましたが、それが意味するものは組織には絶対解があり、人事はそれを運用していればいいという時代は終わり、環境に応じた最適解を模索し続けなければならない時代が来たということです。これまで組織ステージや事業モデルに合わせた人事制度、採用戦略、理念策定をサポートしてきましたが、今年はもう一段、更にそれを進化させたいと思います。コンサルティング事業で培ったフレームワークメソッドはインキュベーション事業(投資事業)に活用することでレバレッジをかけていきます。そこから生まれるキャッシュを他事業に投資していきます。

この事業で世界の「組織戦略」を変えたいと思っています。

⚫︎プラットフォーム事業

労働市場の変化に合わせて、企業と社員にとってのプラットフォームを構築し、提供していきたいと思います。本サービスについては出資先のLiBやFiNCとも連携していく予定です。まずは、来年2月サービスカットオーバー予定の「女性のキャリア」をテーマとしたサービスをしっかりと展開していきたいと思います。

この事業で「女性のキャリア」や「社員のウェルネス」などの「社会課題」に働きかけたいと思っています。

自分が思い描く未来を創るために今までの枠組みを超えた仕掛けに成功するのか。それともここで終わるのか。2016年は勝負の年です。

「本気」とは何か? 〜4つの定義〜

弊社のコーポレートキャッチは「ひとりひとりの本気がこの世界を熱くする」です。これに共感して入社した社員は私たちの部門にも多数います。

もしかしたら、「モチベーションエンジニアリング」よりもこの言葉の方が共感があるかもしれません。

「本気」という言葉は、イメージとしてはmotivationよりもcommitmentに近いでしょうか?

motivationには環境依存的なイメージがあるかもしれませんが、commitmentは自立的、持続的なイメージがあるかもしれません。

多くの場合、「本気」でやると一定の痛みや苦しみが伴いますが、その先にある喜びはかけがいのないものであると思います。

この「本気」の遺伝子はリンクアンドモチベーションの最大の財産ですし、私たちが「本気」の姿を見せることで社会に感動を与えたいと思います。

今日はカンパニーのキックオフでも共有した、私なりに考える「本気」の定義を紹介してみたいと思います。

何かロジックがあるというよりは、私の中での感覚的、経験的な定義です。

①成果を具体的に定める GOAL SETTING

何となく「本気」というと「夜遅くまで寝ずに働く」というイメージを持つ人もいるかもしれませんが、それは私の定義とは異なります。早く帰っても「本気」は体現できます。

弊社では、大切なことは「時間の長さではなく、濃さである」と定めています。「本気」とは言い換えれば、「濃い時間」を過ごそうとする姿勢と言えるかもしれません。

では、「濃い時間」は何から生まれるのか?それは具体的な目標だと考えています。「いつまでに、どんな成果を出すのか?」を定めることです。

「カラーバス効果」という心理学用語があります。color bath、色を浴びる、というのが直訳です。例えば、「今日起きてから、赤い色のものをいくつ見ましたか?」と聞かれて答えられる人はなかなかいません。しかし、その質問がされることが予め分かっていれば、多くの人が答えられるでしょう。

これは「意識をすると脳は見つける」ことを表していますが、いかなる場面でも期限と成果を意識することでこれが可能になり、濃い時間が生まれます。

同じ会議でも漫然と参加するのと、明確な目標があるのでは脳の働き方や時間の濃さには天と地ほどの差が出ます。

部門において、「今、あなたは本気ですか?」と聞くと多くの人が「Yes」と答えますが、「今日、あなたが出そうとしている成果を具体的に教えて下さい。」「この会議であなたが出そうとしている成果を具体的に教えて下さい。」と聞くと多くの人が答えられません。その場合、私の定義においては「あなたは今、本気じゃないですね。」ということになります。

逆に具体的な成果が定められれば、その1日や会議で得られるものは全く違ったものになるはずです。

あらゆる場面で「成果を具体的に定める」が「本気」の第一歩だと考えています。

②現状に正面から向き合う FACE

一定水準以上の成果を出すためには、自分の現状と目指す姿との間にあるGap、つまりは課題を解決しなければなりません。

その課題認識は現状に正面から向き合うことを抜きにしては、成立し得ません。しかし、人間はなかなかそれができません。

私は人間の中の自己防衛意識や現状維持バイアスからどうしても課題認識から自分を外して考えがちで、「この目標は…」「この上司は…」「この部下は…」「この顧客は…」と課題を自分の外に置きがちだと感じます。

「学習する組織 Learning Organization」で有名なMITのピーター・センゲ博士は3本の指という例えでこれを説明しています。

要は何かの問題を指摘する時に、その対象に人差し指は向けられますが、同時に中指、薬指、小指は自分に向けられているということです。要は多くの場合、問題と自分を切り離しては考えられない、ということです。

これを理解し、成果を出すために現状と自分に対して適切な課題認識を持てるのが本気の次のステップだと思っています。

この定義においては、「成果を出すためのあなた自身の課題は何ですか?」に適切に答えられれば「本気」ということになります。

③あらゆる可能性を考える THINK

弊社では自責性の高い社員が多いですが、自責的に見せかけて自虐的になっている場面がしばしば見られます。

例えば成果が出ない時、「どうしていいか分かりません」「私にはできません」「力量不足です」と簡単に言うメンバーがいますが、これは自責的、つまりは自ら責任を負うふりをした、自虐的、責任を投げ出し、悲劇のヒーロー・ヒロインを気取る不誠実な姿勢だと私は感じます。

真に自責的であるとは、つまり自ら責任を負うとは、簡単に投げ出したり、諦めたりせずに、最後の1分1秒まで、目標達成の方法を考え抜くということだと思います。

もしも自分で方法を見つけることができなければ上司や同僚などにとことんまで相談する。

マッキンゼーでヤフーのCSOの安宅和人さんは著書「イシューからはじめよ」の中で「悩む」と「考える」の違いをこのように定義されています。

「悩む」=「答えが出ない」という前提のもとに、「考えるフリ」をすること

「考える」=「答えが出る」という前提のもとに、建設的に考えを組み立てること

その上で、「仕事において悩むというのはバカげたことだ。仕事とは何かを生み出すためにあるもので、変化を生まないとわかっている活動に時間を使うのはムダ以外の何ものでもない。これを明確に意識しておかないと悩むことを考えることだと勘違いして、あっという間に貴重な時間を失ってしまう。」と述べられています。

この定義においては、「成果を出すための方法が考えられているか?自分で考えられないなら、誰かに十分に相談できているか?」に「Yes」と答えられるかが本気かどうかを分かつことになります。

④最後までやり切る DONE

最後はシンプルに、「やる」ということです。多くの人が「本気」に抱くイメージはこれが近いかと思います。

楽天の三木谷社長は行動指針である「成功のコンセプト」において人間には2つのタイプしかいないと仰っています。

「GET THINGS DONE」

様々な手段をこらして何が何でも物事を達成する人間

「BEST EFFORT BASIS」

現状に満足し、ここまでやったからと自分自身に言い訳する人間。

前者か後者か、どちらの人間が「本気」かと問われれば前者です。

この定義においては、「最後までやり切ったか?」の問いに「Yes」と答えることが「本気」の証になります。

弊社における「本気」の定義は私が自分の見方だけで決めるものではないですし、各人がそれぞれに解釈を深めていくべきだと思いますが、私なりの定義を整理してみました。

順風のなかで危機感を抱けるか

去年はこのサイバーエージェント藤田さんが一昨年の大晦日にアップされたブログを何度も何度も読みました。

「順風のなかで危機感を抱けるか」

http://s.ameblo.jp/shibuya/entry-11971203424.html

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※一部抜粋

順風の状況で油断して、当社の

社員が持つ能力を引き出せ

なければ、それこそ本当に危機です。

今年はAmebaの構造改革もあったし、

市場環境的にもそんなにトリッキー

なことをやるべき時期ではないと

思っていますが、

2015年、当面の我々の命題は

「順風のなかで危機感を抱けるか」

ということになると思います。

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サイバーエージェントほどの会社でも、藤田さんほどの経営者でも、こんな風に考えられているのに、私や私の部門の「危機感」は十分ではなかったように思え、反省しています。

去年はチャイナショックをはじめ、「もしかしたらリーマンショックのような景気後退の局面が来るのでは?」と感じるような場面が何度かありましたが、会社全体を見渡しても、そういった場面を想定している人材がどれだけいたでしょうか?

昨年末の藤田さんのこのブログにも影響を受けました。

「2015年度、本決算」

http://s.ameblo.jp/shibuya/entry-12089857416.html

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※一部抜粋

ジリ貧に陥ってから慌てるのではなく、

調子が良い時期にしっかり次の成長の

種を仕込んでおく。

私としては当たり前のことをやっている

つもりですが、短期で見ている人、

中長期でみている人、それ以外にも

様々な利害関係者が存在する上場企業で

先行投資を行っていくことは容易ではありません。

私としては、いつも中長期的な視点で

会社を経営しているつもりです。

次の成長への仕込みは、会社の調子が

悪くなってからではなく、比較的調子が

良い時期に行ってきました。

だから懐疑的な意見や批判はこれから

沢山でてくるでしょう。

そのような声を封じ込めることが出来る

のは、結果が出る数年後です。

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今のサイバーエージェントの好業績で中長期的な視点での構造改革や先行投資に舵を切るというのは社会や業界の流れのようなものを見ていらっしゃるのだと思います。

逆に藤田さんほどの実績のある経営者の方でも、これほどまでの重圧を感じる上場企業の四半期決算とはどれほどの圧力なのか?

これから上場を控える出資先の経営者様や私は、未来への意志をかなり強く持たなければ、簡単にその重力に流されてしまいますね。

肝に銘じたいと思います。

※拙著「すべての組織は変えられる 〜好調な企業はなぜ『ヒト』に投資するのか〜」好評発売中です。 http://www.amazon.co.jp/dp/4569826156

2015年 投資事業 振り返り

2015年を投資事業についても振り返りたいと思います。

社外からはご注目頂くことが多いですが、社内からはあまり理解されてないことも多いので、社内向けの意図も込めて、どういう方針で取り組んでいるのかから書きたいと思います。

モチベーションエンジニアリングで世界を変えるためのアプローチはいくつかありますが、そのうちの一つが「モデルケース」を創ることだと思っています。

例えば、Googleがある組織施策を変えれば世界中の企業の組織施策が変わるわけです。そういった「モデルケース」を、投資後のハンズオンのサポートで一緒に創っていくのが投資事業です。

「モデルケース」を創るためには中長期的な目線で取り組む必要があると考えており、基本的にはM&AによるEXITではなく、IPOを目指す企業様と、上場後も一定の株式を保有してサポートし続けることをポリシーとしています。

2013年11月からスタートした新規事業ですが、素晴らしい投資先の企業様との出会い、新参者の私に知恵を授けて下さるVCの先輩方の教えにより、順調に進捗してきたと感じています。

私はリンクアンドモチベーションの投資事業の責任者と紹介されることも多いですが、実は責任者はリンクアンドモチベーション取締役で管理部門担当の大野です。

私は起案者であり、立ち上げメンバーではありますが、投資前のソーシングや投資後のサポートを担当しており、最終的なジャッジメントは会長の小笹と大野により、デューデリジェンスやタームシートなどは管理部門スタッフにより行われます。私が担当している会社が半分以上ですが、小笹や大野に直接持ち込まれて投資に至る案件もあります。(これはよく驚かれるのですが、私も含めて投資事業には専任メンバーがいません。)

ちなみに投資事業における私の肩書きは「インキュベーション推進室 マネージングディレクター」です。これは投資事業を立ち上げる時に、金融っぽい横文字の肩書きをつけてみたいとノリでつけたもので、未だに何をするのかは定まっていません(笑)

今年は私がソーシングを担当したのは、リーディングマーク、schoo、ラクスル、リノベる、PLAN-B、LiBになります。今年も本当に良い出会いに恵まれたな、と感じています。本来であれば私から色々なことをお伝えすべきですが、学ばせて頂くことの方がむしろ多かったです。

またアーリーステージで投資をさせてもらったフロムスクラッチがシリーズA、シリーズBでBtoBエンタープライズ領域としてはトップクラスの10億円の調達、FiNCがANAをはじめとした一部上場企業複数社からの大型調達と注目を集めました。

B/Sからの出資になりますので、資金は限られており、下半期以降はかなり抑えているのが現状です。完全に門戸を閉ざしているわけでは決してありませんが、今は投資先をどうサポートするか、について確固たるメソッドを構築することに軸足を置く時期だと思っています。

拙著「すべての組織は変えられる」にも書きましたが、ITインターネット業界はどんな組織を創れたかで勝敗が決する時代になってきました。

投資事業におけるベンチマークシリコンバレーのVC、アンドリーセン・ホロウィッツです。Facebook、twitter、Airbnbなどに投資している言わずと知れたトップランナーですが、投資後の支援、特にリクルーティングやチームビルディングなどの組織面の支援にかなり力を入れていると聞きます。

コンサルティングも投資も、とかく個人事業主のようになりやすいですが、組織としての確固たるノウハウやメソッドを構築し、業界にインパクトを与えられる事業を育みたいと思います。

※拙著「すべての組織は変えられる 〜好調な企業はなぜ『ヒト』に投資するのか〜」好評発売中です。

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2015年 組織人事コンサルティング事業 振り返り

年末年始、久々に時間がゆっくり取れたので、前々からやろうと思っていたブログを始めることにしました。

 

今日は大晦日なので、2015年を振り返りたいと思います。

 

2015年上半期は昨年対比150%の成長を実現しましたが、逆にフツフツと湧き上がるある想いがありました。

 

「この延長線上で、モチベーションエンジニアリングで世界は変えられるのだろうか?」

 

この5年でリンクアンドモチベーションの中小ベンチャー企業向けコンサルティング部門の売上は5倍になりました。

 

しかし、それはリーマンショック後の景気拡大に乗っかっただけではないか?

 

だとすると、景気後退の場面ではまた業績が下がりを繰り返すだけではないか?

 

私自身の属人的なパフォーマンスに依存して成長してきたのではないか?

 

だとすると、私がカンパニーを離れると簡単に崩れてしまうのではないか?

 

そもそも、今のままの成長では社会にインパクトを与えられるビジネスにならないのでは?

 

そこからはカンパニーの年間テーマ「みんなで未来を創る」のもと、リスクを取って中長期を見据えた構造改革や開発投資に取り組みました。

 

事業においては、ビジネスモデルの転換に向け、人員の3分の1を投下し、サービスラインナップのフルリニューアルに挑みました。年明けにはクラウド型やプラットフォーム型の新サービスもようやくローンチされます。

 

組織においては、マネジャーにもメンバーにも、大きな裁量権を渡しました。特に事業部長やマネジャーの新規登用を積極的に進めました。1年間通して関西東海拠点は最後まで任せきりましたし、第3クオーター(7月〜9月)はカンパニー運営そのものをボードメンバーに委任しました。

 

今年がどういう1年だったかは、来年2016年の結果によって決まります。結果をもって、自分たちの挑戦を正解にしなければなりません。

 

2015年の下半期、私の誤算は事業においては短期的な成果へのこだわりの薄れ、組織においては当事者としての意識の薄れが想像以上に大きかったことです。

 

カンパニーの立ち上げから3年。

 

10人ほどだったメンバーも50人近くになり、気つけばリンクアンドモチベーションで最大のカンパニーになりました。

 

創業のメンバーたちが当たり前のように持っていたこだわりや意識が拡大の中で薄らいでいくなんて、初歩的なあるあるですが、それにハマってしまうあたりに自分の経営者としての未熟さを痛感しました。

 

入社以来、大手企業向けコンサルティング部門2年、人事マネジャー3年半、社長室長1年半と経験してきましたが、現在の中小ベンチャー企業向けコンサルティング部門は気づけば6年、来年はもう7年目です。

 

来年は集大成、ラストイヤーのつもりで結果にこだわりたいと思います。