kojiasanoのブログ

株式会社リンクアンドモチベーションで執行役員として組織人事コンサルティング事業、投資事業を担当している麻野耕司のブログです。

「本気」とは何か? 〜4つの定義〜

弊社のコーポレートキャッチは「ひとりひとりの本気がこの世界を熱くする」です。これに共感して入社した社員は私たちの部門にも多数います。

もしかしたら、「モチベーションエンジニアリング」よりもこの言葉の方が共感があるかもしれません。

「本気」という言葉は、イメージとしてはmotivationよりもcommitmentに近いでしょうか?

motivationには環境依存的なイメージがあるかもしれませんが、commitmentは自立的、持続的なイメージがあるかもしれません。

多くの場合、「本気」でやると一定の痛みや苦しみが伴いますが、その先にある喜びはかけがいのないものであると思います。

この「本気」の遺伝子はリンクアンドモチベーションの最大の財産ですし、私たちが「本気」の姿を見せることで社会に感動を与えたいと思います。

今日はカンパニーのキックオフでも共有した、私なりに考える「本気」の定義を紹介してみたいと思います。

何かロジックがあるというよりは、私の中での感覚的、経験的な定義です。

①成果を具体的に定める GOAL SETTING

何となく「本気」というと「夜遅くまで寝ずに働く」というイメージを持つ人もいるかもしれませんが、それは私の定義とは異なります。早く帰っても「本気」は体現できます。

弊社では、大切なことは「時間の長さではなく、濃さである」と定めています。「本気」とは言い換えれば、「濃い時間」を過ごそうとする姿勢と言えるかもしれません。

では、「濃い時間」は何から生まれるのか?それは具体的な目標だと考えています。「いつまでに、どんな成果を出すのか?」を定めることです。

「カラーバス効果」という心理学用語があります。color bath、色を浴びる、というのが直訳です。例えば、「今日起きてから、赤い色のものをいくつ見ましたか?」と聞かれて答えられる人はなかなかいません。しかし、その質問がされることが予め分かっていれば、多くの人が答えられるでしょう。

これは「意識をすると脳は見つける」ことを表していますが、いかなる場面でも期限と成果を意識することでこれが可能になり、濃い時間が生まれます。

同じ会議でも漫然と参加するのと、明確な目標があるのでは脳の働き方や時間の濃さには天と地ほどの差が出ます。

部門において、「今、あなたは本気ですか?」と聞くと多くの人が「Yes」と答えますが、「今日、あなたが出そうとしている成果を具体的に教えて下さい。」「この会議であなたが出そうとしている成果を具体的に教えて下さい。」と聞くと多くの人が答えられません。その場合、私の定義においては「あなたは今、本気じゃないですね。」ということになります。

逆に具体的な成果が定められれば、その1日や会議で得られるものは全く違ったものになるはずです。

あらゆる場面で「成果を具体的に定める」が「本気」の第一歩だと考えています。

②現状に正面から向き合う FACE

一定水準以上の成果を出すためには、自分の現状と目指す姿との間にあるGap、つまりは課題を解決しなければなりません。

その課題認識は現状に正面から向き合うことを抜きにしては、成立し得ません。しかし、人間はなかなかそれができません。

私は人間の中の自己防衛意識や現状維持バイアスからどうしても課題認識から自分を外して考えがちで、「この目標は…」「この上司は…」「この部下は…」「この顧客は…」と課題を自分の外に置きがちだと感じます。

「学習する組織 Learning Organization」で有名なMITのピーター・センゲ博士は3本の指という例えでこれを説明しています。

要は何かの問題を指摘する時に、その対象に人差し指は向けられますが、同時に中指、薬指、小指は自分に向けられているということです。要は多くの場合、問題と自分を切り離しては考えられない、ということです。

これを理解し、成果を出すために現状と自分に対して適切な課題認識を持てるのが本気の次のステップだと思っています。

この定義においては、「成果を出すためのあなた自身の課題は何ですか?」に適切に答えられれば「本気」ということになります。

③あらゆる可能性を考える THINK

弊社では自責性の高い社員が多いですが、自責的に見せかけて自虐的になっている場面がしばしば見られます。

例えば成果が出ない時、「どうしていいか分かりません」「私にはできません」「力量不足です」と簡単に言うメンバーがいますが、これは自責的、つまりは自ら責任を負うふりをした、自虐的、責任を投げ出し、悲劇のヒーロー・ヒロインを気取る不誠実な姿勢だと私は感じます。

真に自責的であるとは、つまり自ら責任を負うとは、簡単に投げ出したり、諦めたりせずに、最後の1分1秒まで、目標達成の方法を考え抜くということだと思います。

もしも自分で方法を見つけることができなければ上司や同僚などにとことんまで相談する。

マッキンゼーでヤフーのCSOの安宅和人さんは著書「イシューからはじめよ」の中で「悩む」と「考える」の違いをこのように定義されています。

「悩む」=「答えが出ない」という前提のもとに、「考えるフリ」をすること

「考える」=「答えが出る」という前提のもとに、建設的に考えを組み立てること

その上で、「仕事において悩むというのはバカげたことだ。仕事とは何かを生み出すためにあるもので、変化を生まないとわかっている活動に時間を使うのはムダ以外の何ものでもない。これを明確に意識しておかないと悩むことを考えることだと勘違いして、あっという間に貴重な時間を失ってしまう。」と述べられています。

この定義においては、「成果を出すための方法が考えられているか?自分で考えられないなら、誰かに十分に相談できているか?」に「Yes」と答えられるかが本気かどうかを分かつことになります。

④最後までやり切る DONE

最後はシンプルに、「やる」ということです。多くの人が「本気」に抱くイメージはこれが近いかと思います。

楽天の三木谷社長は行動指針である「成功のコンセプト」において人間には2つのタイプしかいないと仰っています。

「GET THINGS DONE」

様々な手段をこらして何が何でも物事を達成する人間

「BEST EFFORT BASIS」

現状に満足し、ここまでやったからと自分自身に言い訳する人間。

前者か後者か、どちらの人間が「本気」かと問われれば前者です。

この定義においては、「最後までやり切ったか?」の問いに「Yes」と答えることが「本気」の証になります。

弊社における「本気」の定義は私が自分の見方だけで決めるものではないですし、各人がそれぞれに解釈を深めていくべきだと思いますが、私なりの定義を整理してみました。